2006年03月24日

(21)誘うは、階差



「これはまた立派なチョコボですなあ」

商人特有の大きな声が、門の内側から聞こえてきた。
兵隊ににじり寄ろうとしたヴァンだったが、その声に足を止める。

「一目で分かりますよ。ツィッタの産でしょう。土が違うと、チョコボの育ちも違いますなぁ」

のそりのそりと、ミゲロが姿を現す。
その後ろから、パンネロが心配そうについてきた。
パンネロはヴァンに駆け寄ると、その腕にしがみつく。
ミゲロは軽快なトークで、兵隊に愛想を振りまいていた。

「そうそう、土が変われば味も変わるものでして、たとえばダルマスカのバロース酒。深みと香りはアルケイディア産に一歩譲りますが、実に力強い風味でこれはこれで悪くないものです。いかがですかな? ──もちろん、人数分ご用意しとりますよ!」

 



「おい、『積荷』を通したら予定通り門は封鎖だ。くそ、鎧の中が砂だらけだ」

ミゲロの差し出した酒瓶を乱暴に受け取りながら、兵隊は部下に指図する。
兵隊たちは『砂を落としに』門の前からぞろぞろと引き上げていく。

門の前に足止めされていた民衆が、今のうちにとばかりぞろぞろと門の中へ移動をはじめた。

ミゲロは形式的に丁寧に深々とお礼をすると、ヴァンを振り返る。

「あんまり心配させんでおくれよ。まぁ大事にならんで何よりだ」



「さぁ、わたしたちも行こう」

パンネロがヴァンの腕をひっぱる。
ヴァンはやりきれない思いを抱いたまま、じっと唇を噛み締めた。
なぜ帝国軍の兵士達は自分たちを差別しようとするのか。
彼らと自分たち、何が違うというのか。

動かないヴァンを、パンネロがひっぱる。
門の中、広場の方でざわめきが大きくなった。
ヴァンは顔をあげて、そちらを見る。

「おお、じきに式典がはじまてしまうな。こりゃ、いそがんとな」

式典の宴を用意する役のミゲロが、あたふたとする。

ヴァンは考えていた。
このような状況を作り出した執政官というのは、どんな顔をしたやつなんだろう。
考え出したら止まらなくなったヴァンは、いきなり広場に向かって駆け出した。
びっくりしたパンネロが、慌てて後を追う。

「あ、ちょっと! 待ってよ、なに・・・ ねぇ、どうしたの、ヴァン!」


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